当院でおこなっている痔の日帰り手術につき、簡単に説明します。姉妹サイト、「イラストでみる大腸肛門病」でも一般的な注意はかいています、またスライドショーで解説した「じー太手術室へ」もご参照ください。
日帰り手術のメリットやデメリットを十分に理解し、外来受診などの術後の指示をしっかり守って頂ける方でないと日帰り手術はうけれません。
»治療方針
軽症の内痔核もあれば、ひどい脱肛をきたすような重症のない痔核もあります。これらをすべてひっくるめて、「内痔核ならすべて同じ治療法で治します」ということはありえません。軽症の痔核には簡単な治療を、重症なら根治療法を、と重症度に合わせた過不足のない「最適な」治療を心がけています。
ですから、当院では長期の成績が明らかでない「最新の」治療は原則としておこなっていません。肛門疾患は良性の病気ですから、手術後5年、10年を経ないとほんとうの成績はわからないからです。
具体的には、2006年現在でレーザー療法など従来の方法と「器械が違うだけで技法がおなじ=従来の方法と遜色のない成績が期待できる」治療法はおこなっていますが、PPHやzioneは行っていません。内痔核の治療法では「画期的な治療法」がよく報告されますが、従来法を短期成績でも凌駕するものはありません。
»外来受診
肛門手術は原則として、すべて予約手術となります。手術前にいちど受診して頂く必要があります。診察後に手術が必要かどうか、手術するならばどのような手術が望ましいか、について説明します。
»手術前日
夕食にはお酒や消化が悪いものはひかえてください。就寝前には、おわたしした下剤と睡眠導入剤を服用し、ゆっくりとお休みください。
また、ふだんから服用されているくすりがあるときは、お申し出下さい。手術前に数日の休薬が必要な場合があります。
»手術当日朝
朝より絶食ですが、少量の水分は可能ですので、ふだん飲んでいるくすりで大事な薬(血圧や不整脈の薬など)は、糖尿や血液をさらさらにする薬以外はのんでもらってもかまいません。判断に迷うときは医師にご相談ください。
また、ご帰宅するときを考え、できるだけ公共交通機関でおこしください。
来院すれば、まず点滴など手術の準備をおこないます。浣腸をして腸をきれいにし、肩に抗不安剤など前処置の注射をしてから、手術室へはいります。
»手術当日午後 オペ室
オペ室へは車いすで出室します。まず、心電図や血圧計など、モニターを体に装着します。
つぎに、麻酔の準備です。サドルブロック麻酔で行う手順は、オペ台に深く腰をかけて、自分のおへそをのぞきこむように、丸くなります。消毒をすませたあとに、術者は背中の麻酔の針を刺す場所をまず、指で探ってから声をかけて、針を刺します(当院では、この腰椎麻酔用の針はペンシルタイプという細い特殊な麻酔針を使います)。
麻酔薬を注入すれば、2,3分で肛門まわりからしびれてきます。体位をジャックナイフあるいは砕石位とします。
麻酔がしっかり効いていることを確認して手術が始まります。手術中はもちろん、痛みはまったくないのが通常です。
患者さんの自己負担を減らす意味から、当院では全身麻酔や静脈麻酔の追加は原則としておこないません。ただし、不安症のひとでご希望があれば、すこしウトウトするように薬を追加することも可能です。
»手術当日午後 術後
手術が終われば、回復室で点滴をしながら休みます。麻酔後すぐでも膝を立てたりできますが、臀部には力が入りにくいので、しばらくはひとりで歩くのは難しいからです。
手術後早ければ2時間ほどで肛門周囲の感覚がもどってきます。腰椎麻酔後の注意しなければならない副作用に、尿が出にくくなることがあります。どうしても、肛門周囲だけでなく、膀胱の方まで麻酔が効くからです。
原則として、当院では自分で尿が出るのを確認してから帰宅してもらいます。早い人で術後3時間ほどですが、およそ4、5時間と思ってください。最後に創部のチェックをし、出血など問題がないことを確認し帰宅となります。
ご帰宅はできるだけ、どなたかお迎にきてもらってください。手術当日、および翌日はできるだけ横になり安静にしてください。手足のイボをとったのとは訳が違います、「自宅で入院」している気持ちが必要です。
»術後 外来通院
手術後は外来通院が必要です。手術により変わってきますが、傷が完全に治るにはふつうの内痔核の手術では1ヶ月はかかりますので、それまで数回の通院が必要となります。
経過がよい、痛みがない、といったことで、ついつい外来受診がおろそかになる方がありますが、日帰り手術といっても、昔は2週間ほど入院していた病気です。通院の指示は厳守してください。