ピロリ菌の除菌について

ピロリ菌があることで、さまざまな胃や十二指腸の病気が説明されるようになりました。そこで、胃からピロリ菌を追い出そうというのが除菌療法です。

除菌療法をする前に

ピロリ菌の検査

除菌療法をする前に必ずしておかなければならないことがあります。ひとつは、当たり前ですがピロリ菌が胃の中にいることを確認しておくこと。ピロリ菌がいない人に除菌をすることは意味がありません。

もうひとつは、胃癌の合併がないかどうか、の確認です。胃癌だけに特徴的な症状はなく、胃潰瘍や慢性胃炎の症状となにも変わりません。

とくにピロリ菌感染がもとになり、慢性胃炎が高度に進んでいる場合には、胃癌が合併していることもめずらしくありません。まずは胃の内視鏡をすることが必要です。

以前と比較すると、胃カメラもずいぶんと細くなり、楽に検査が受けられるようになっています。また当院では、通常の内視鏡のおよそ半分の太さで、鼻から挿入できる「吐き気が少ない楽な胃カメラ」経鼻内視鏡も導入しています。当院で実施している「鼻から胃カメラ」の頁も参照してください。

除菌療法の適応とは

それでは、どのような症例にピロリ菌の除菌を行うべきでしょうか?先述したように、現在の日本の高齢者は80%以上が(量の多い少ないは別として)ピロリ菌を胃のなかに持っています。たびたび胃潰瘍を患う人、胃薬を離せない人は除菌をするべきでしょう。また、慢性胃炎が強く、将来に高分化胃癌の発生が懸念される場合も除菌療法の適応となります。

いっぽうで、除菌療法をすることで慢性胃炎がよくなると、胃酸が多くでるようになります。逆流性食道炎がある場合は、除菌をすることで胸焼けがひどくなります。

特に食道ヘルニアがあるひとでは、原則として除菌はしないほうが賢明です。このヘルニアの有無を確認する意味でも、除菌前の内視鏡検査はかならず受けておくべきでしょう。

除菌療法の実際

除菌療法の基本は、胃酸を強くおさえる薬1種類と抗生物質(プラス駆虫剤)2種類を朝、夕で1週間服用することです。2007年秋の時点で保険適応がある除菌法は

  • 1. プロトンポンプ阻害剤と抗生物質クラリスロマイシン、アモキシシリンの3剤併用療法
  • 2. プロトンポンプ阻害剤と抗生物質メトロニダゾール、アモキシシリンの3剤併用療法

このうち、1.は従来より行われてきた除菌法です。この治療法が開始されたころはおよそ90%の除菌成功率でしたが、特にクラリスロマイシンの耐性菌がふえてきたことから、近年では70%前後まで除菌成功率が下がってきました。

2.はこれに変わる方法として、クラリスロマイシンに変えて(トリコモナスなどの駆虫剤)メトロニダゾールを使うものです。

欧米では以前より標準療法として用いられてきただけでなく、本邦でも標準3剤併用療法で除菌に失敗した方に対して、保険外診療として行われてきました。十分に評価が定まっている方法ですので、安心してください。

まずはクラリスロマイシンを含む3剤併用療法で除菌を試み、その後除菌が不成功に終わった方について、メトロニダゾール(商品名フラジール)を含んだ新3剤併用療法を行うこととなります。

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