胃癌1 概説と症状
胃粘膜の遺伝子に傷が付き、突然変異をおこし胃癌細胞ができます。疫学的には胃癌になる人(罹患率)は年々減っています。
臓器別で考えると、同じように減っているのが肝臓癌、子宮癌。増える傾向にあるのは肺癌、大腸癌、卵巣癌です。男性の前立腺癌、女性の乳癌は、あきらかに増加しています。
このように胃癌にかかる人はどんどん減っています。たとえば女性での癌罹患率でいえば、いまや胃癌は乳癌や大腸癌よりも低率です。しかし、高齢化の要因を補正してみた死亡率は2004年では、いまだに胃癌が死亡率で一番です。(注:2004年度の統計では単純にがん死亡数を比較すれば、男性で肺、胃、肝臓の順。女性では大腸、胃、肺の順になります。)
胃癌の典型例を早期癌、進行癌で提示します。
症例1(早期癌)
男性、52歳 自営業。喫煙習慣なし。以前から胃もたれあり、ときどき胃薬のお世話になる。
最近は胃の不快感がときどきあり、去年の健康診断ではバリウム検査で慢性胃炎を指摘されている。ことしも健康診断を受け、ピロリ菌の検査(尿素呼気検査)も勧められた。
診断のポイント
胃の症状はとくべつな症状なし、昨年に指摘された慢性胃炎の症状として何の不思議もない。早期胃癌ではまったく無症状のことも多い。
検査
ピロリ菌は慢性胃炎で高率に感染しています。また、慢性胃炎は高分化胃癌の発生母地ですので、バリウム検査よりも内視鏡検査が適しています。慢性胃炎からできる早期胃癌は、凸凹がめだたない色変わりだけのタイプもあり、また早期に発見すれば内視鏡治療だけで治癒するものも多いからです。
症例2(進行癌)
男性、52歳 自営業。たばこは日に1箱。
健康診断は会社検診のみ、バリウム検査は5年前が最後。1年前から食後に胃のもたれ、不快感があったが、胃薬を飲むとすぐよくなっていたので、放置していた。
半年前から食後に胃が痛み、むかつきを感じるようになった。食事やお酒も味が落ち、体重がこの3ヶ月で5キロも減ったので心配になり、胃腸科を受診した。
診断のポイント
胃の症状としては、胃潰瘍あるいは胃癌を疑う。それ以外では、膵臓や胆道の悪性腫瘍でも、むかつきや腹痛、体重減少はおこりうる。検査を至急で進める必要大。
検査
胃の検査も数年受けていないので、内視鏡検査あるいはバリウム検査が必要です。胃の検査で異常がなければ、膵臓、胆道系の悪性腫瘍の可能性もあり、超音波検査やCT等もおこないます。血液検査で腫瘍マーカーもチェックすべきです。