ピロリ菌とは

ピロリ菌をご存じでしょうか。最近はテレビのコマーシャルでもおなじみとなりました。その昔は胃の中は酸性がつよいので、細菌が生息できない、と考えられていました。その「医学的な常識」を覆したのが、ピロリ菌です。

ピロリ菌の発見は、それまでの胃潰瘍、胃炎、ひいては胃癌の発生に対する考え方を根本から変えました。発見したオーストラリアの学者、ウォーレン博士、マーシャル博士ににノーベル医学賞が授与されたのは2005年のことです。

ピロリ菌とは

ピロリ菌の正確な名はヘリコバクターピロリです。菌体に鞭毛をもち、それをヘリコプターのように動かします。また、この菌は胃の幽門部（ピロルス）に多く認められるので、こう呼ばれています。一番の特徴はみずからの周囲をアルカリ性につつむことで、胃酸を中和し胃の中に生息できることです。

ピロリ菌の感染は口から入って始まる、と考えられています。世界で見ると、一般に上下水道の整備された先進国で感染率は低く、逆に発展途上国は感染率が高い傾向にあります。日本でも戦前戦後の衛生状態が悪い時代を乗り越えてこられた60才以上の方の感染率は80％以上です。

ピロリ菌がひきおこす障害

ピロリ菌が胃の中にいることで粘膜が傷害されます。そのメカニズムはさまざま考えられています。

• ピロリ菌の毒素による粘液細胞の直接障害
• ピロリ菌の産生するアンモニアによる粘膜障害
• 炎症の結果として遊走した白血球（好中球）による活性酸素による障害

いずれにしても、ピロリ菌により胃の粘膜細胞が傷害され、その結果として胃炎や胃潰瘍ができる、とされています。また、動物実験ではピロリ菌によりある種の胃癌ができやすくなることも報告されています。

ピロリ菌の検査

ピロリ菌の除菌

以上をふまえて、ピロリ菌を積極的に胃からとりのぞこう、という治療法が普及してきました。除菌療法については、あらたに頁を改めて記しました。2007年秋に保険適用された新しい除菌療法についても書いています。