その他 逆流性食道炎1 概説と症状
逆流性食道炎とは、言葉のとおり、胃酸が食道へ逆流して食道粘膜を荒らす、という病気です。食生活の変化、加齢や肥満の影響で、さいきん本邦でもどんどん増えている病気です。
本来は胃に溜まった食べ物は、胃の中である程度消化されると、胃の動きと共に十二指腸へ送られます。ところが、胃と食道の境目が弛んだりすることで、胃酸が胃内容といっしょに口側へ逆流するのです。
胃癌の手術後に逆流性食道炎がおきることもあります。胃切除した後に残った胃と十二指腸を無理してつなぐと、十二指腸のアルカリ液が逆流しておきます。これは胃を切った後のつなぎ方を工夫すれば防げるので、最近は減っています。
典型例を提示します。
症例
女性、68歳 主婦。喫煙歴、飲酒歴なし。
子供は自営業で毎日帰りが遅いが、いつも一緒に遅い夕食をすましている。夕食後は、すぐ床に入る毎日。
運動不足もあり、ここ3年で5キロ体重が増加している。最近になり朝早くや食後に胸焼け、胃もたれがおきるようになり、近くの一般内科を受診した。
バリウムや内視鏡検査はしなかったが、血液検査でピロリ菌感染を指摘された。医師の薦めでピロリ菌の除菌療法を行った。
しばらくして胃もたれは楽になったが、胸焼けがさらにひどくなる。市販の胃薬でも症状は改善せず、さらに食事が胸につまるようになったため、胃腸科を受診した。
診断のポイント
比較的高齢の女性で、最近体重増加を認めている。食事を遅い時間に摂り、その後すぐ横になってきたことから、食道胃の逆流が疑われる。
さらにピロリ菌の除菌をうけてしまったため、症状が増悪する。除菌後は食道下部括約筋の調節が不調になったり、胃酸がよく出るようになるため、逆流症状が悪化したことが考えられた。
検査
以上の病歴から、逆流性食道炎がつよく疑われます。ただちに胃の内視鏡検査が必要です。
内視鏡検査で胃と食道の接合部から、口側に向かって縦に赤くなったり潰瘍ができたりしていれば、確定診断となります。典型例では組織検査は必要ありません。
バリウム検査では重症の逆流性食道炎でないと捉えられませんが、食道裂孔ヘルニアの有無を判定するには有用です。肥満があるときには、生活習慣病を合併していないかどうか、血液検査でチェックするべきです。