質問とリクエスト その2

あらかじめ、座席を引き替えた際に、質問票をかきこんだのですが、そこから抽出した質問あるいはリクエストに徒然亭の弟子たちが応える、という趣向。各人にそれぞれ、順不同で。

まずは草原へ。「蛸芝居をやってください」と。「落語は嘘でも演目一つで15分はかかりますからね」と、困惑する吉弥さん。で、結局遠藤Pより、「蛸がすり鉢から上がってくるさわりのシーンだけでも再演を、」という話になりまして。ただ、扇子がないとこれもできませんので、袖のスタッフに依頼して扇子と手拭いを届けてもらいました。

ただ、落語家にとってはたぶん、扇子や手拭いといった小道具は、精神安定剤のようなものなのでしょう(私の友人の落語ファンも、用もないだろうに常に扇子をもっています)。

やがて扇子、手拭いがとどけられ、スタンバイ(余談ですが、もってきた手拭いを椅子の上にぽん、とおいて腰をかけたのが、「ほんなら手拭いいらんやん」娘にうけてました)。パーカーを着て椅子に腰掛けての蛸芝居、先日に吉弥さんの弟弟子、桂よね吉さんがしてるのも見ましたが、吉弥さんのほうが失礼ながら「たこ顔」らしい、と。やんややんや、の拍手喝采であります。

つづきまして草々。彼へのリクエストは、壁を蹴破って若狭に「今日からおまえがおれのふるさとや」といってくれ、というもの。ドラマ前半の一つのハイライト、草々の若狭への風変わりな(乱暴な)プロポーズ、平成19年末最後の放映(時は鐘なり、の週)でした。撮影で蹴破った壁は、その1回だけのシーンのためにわざわざ作ったのでしょう。実際はあんな無茶苦茶なことされたら、家主は大変ですよ。安普請の家なら、壁一つ抜いたら屋根が落ちますでしょうし。

話戻りまして。さきほどのリクエストですが、「相手役は若狭でなくて、四様でおねがいします」と、なかなか、よくそんなこと思いつくもんですね、素晴らしい。さっそく、青木君、虎ノ介さんのふたりが、こそこそと打ち合わせ。みなが椅子を後ろへ下げて、舞台中央にスペースをもうけます。小草若が「それじゃ私、演出します。スタート、かけますよ」。また、草原が「それじゃ私、音声効果音をやります。いきまっせ。」となります。これらが実に自然な雰囲気で、つねづね、徒然亭一門の弟子たちの雰囲気の良さを彷彿とさせます。

舞台右袖に小草若がひらいて、「よーい、スタート!」?と声をかける。すると、その横の草原、ちょうど壁を蹴破ったあとに流れていた劇中曲を(多少、音程がはずれていたのもご愛敬)。草々、「どかーん」と叫んで壁をけやぶるポーズ、ついで壁をまたいで若狭の部屋へ。そこに立ちつくす若狭に扮した四様。がっと抱きすくめて、そこで一言「今日からおまえが俺のふるさとや」。割れんばかりの拍手、拍手。

小草若については、「高速底抜け」を見せてください。さらに「好きな人に捧げる歌を」と、これらはスタジオパークでもあったような、わたしの記憶違いかも。高速底抜けを披露した後、底抜け誕生秘話についても「次週(思えば遠くへすったもんだ)の放送を楽しみにしてください」。

ついで小草若が若狭をなぐさめよう、として尾崎豊の曲を歌うシーンについて。劇中では「I LOVE YOU 底抜けに 今だけは悲しい歌 聞きたくないよ I LOVE YOU,,,」とありましたが、ここにも別バージョンがあったそうです。

つまり、「I LOVE YOU 底抜けに 今だけは 底抜けに 悲しい歌 底抜けに 聞きたくないよ 底抜けに I LOVE YOU 底抜けに ,,,」と、歌詞の合間合間に「底抜けに」を挟むものがあったそうです。これはあまりにやりすぎか、と結果、放送されたバージョンに落ち着いたそうです。

脱線しますと、このように劇中で歌を使うにも、歌手の許可が必要らしいです。今回も尾崎豊事務所?にことわりを入れて、快諾を得たとか。

さらに脱線しますと、あの兄弟子たちが若狭を慰める回。もちろん小草若や、「いちご白書をもういちど」を熱唱する草原も楽しかったですが、一番はやはり四草。九官鳥にしこんで、若狭に「ガンバレ、わかさ」といわせる奇想天外さ。あの頃から、四草がただの皮肉屋、毒舌家でない面が明らかになってきたような。

というわけで、四草。このリクエストはまったく直截的、「私を口説いてください」と!「虎ノ介さん、やっぱりもてるでしょう?」「いえいえ、まったくもてません。」「劇中はあんなに色気があるのに?」「ふだんはぜんぜん色気ないですよ。ねぇ、草原兄さん?」「ほんまに色気ありませんよ。」とにかく、無頓着とか、ええ加減とか、が彼の枕詞のようになってるようでして。

さきほどの草々壁破りの再現シーンの時も、なんでもズボンの社会の窓(死語?)が全開になっていたそう。しかも、その前に草原が指摘していたらしいのですが、「いったいどれだけファンサービスするねん」と。

最後に、後方の席にいた質問者の妙齢女性に向かって、立ち上がってマイクで一言。「俺の部屋へ来い」と。大拍手、質問者にマイクが向けられて「いまから伺います」と、さすが関西のご婦人。「ほんまに汚い部屋ですよ」と草原が叫びます。

最後は若狭。質問は、「貫地谷しほりが、4人の兄弟子から(1)夫(2)恋人(3)兄(4)友人をそれぞれ選ぶとしたら。」というもの、これはおおよそ、想像がつきそうなものですが。

さて、しほりちゃんがしばし考え込んで、出した結論。

「まず、夫は頼りがいのある人がいいので、草原兄さん。」よっしゃ、と草原。「次に恋人がむずかしいのですが」と前置き、選択肢はふたつのようでして。「小草若にいさんは、早くから喜代美ちゃんと名前で呼んでくれたのが嬉しかった」のですが、「やっぱり、ずっと恋人であり夫役を半年にわたって演じてきたので草々さんかな。」

「なんじゃい、兄役かい、どうでもええわ。」と毒づく小草若。けっきょく四様は夫でも恋人でも兄でもない、という役回り。しほりちゃん曰く「夫にするには、ふだんのだらしないところが気になるし。恋人になったら、部屋へ行ったら別の女の人がいそうで嫌だし。兄にするのもちょっとどうかな?」。演技上の四草と実物の虎ノ介像の悪い点をあわせて考えてるようで。