胃癌3 治療:内視鏡治療

胃癌の治療法

癌の治療法にはいろいろな方法があります。外科手術以外にも、抗癌剤を使った化学療法、放射線療法、免疫療法など、それぞれの癌の組織型や解剖学的位置などの特性に応じて、さまざまな治療法を組み合わせます。

しかし、残念ながら胃癌の場合は治療法は限定されています。放射線療法、免疫療法は通常はおこなわれませんし、化学療法も(格段に進歩はしましたが)単独で癌を治すような効果は期待しにくいです。

胃早期癌とは

近年、胃早期癌に対しての内視鏡治療は長足の進歩を遂げています。ちなみに早期癌とは、胃癌が胃の粘膜層あるいは粘膜下層に留まっている癌をいいます。ただし癌細胞が粘膜下層でも固有筋層に近いところまで拡がっている場合には、外科治療が選択されます。

早期癌ではいまや外科治療よりもまずは内視鏡治療を試みて、治癒が期待しにくい時に改めて外科手術をする、という方向に変わりつつあります。

内視鏡下粘膜切除術 (EMR)

内視鏡下粘膜切除術

Endoscopic Mucosal Resection、内視鏡下粘膜切除術は内視鏡で見ながら、胃癌を粘膜下層の一部をふくめ切除する方法です。

具体的な手順は上図に示したとおりです。まずは胃癌の粘膜下層へ生理食塩水などを注入して、胃癌の部分を持ち上げます。その後、その持ち上がった部分にワナをかけて、周囲の正常胃粘膜と共に焼き切ります。切除した癌組織は回収して病理検査に供します。

画期的な方法ですが、浅い癌でも横に拡がったような表在型のものや、潰瘍をともなったようなものでは、早期胃癌でも対象になりません。内視鏡にフード(帽子のようなもの)をかぶせたり、腫瘍の根本を輪ゴムで縛って持ち上げたり、と工夫はされても、適応が限られていました。

内視鏡下粘膜下層剥離術(ESD)

内視鏡下粘膜下層剥離術

そこであらたに開発された手法が、Endoscopic Submucosal Dissection、内視鏡下粘膜下層剥離術です。内視鏡で見ながら粘膜を切開し、粘膜下層を剥離する方法です。従来なら外科手術を行っていた症例、たとえば表層へひろがるタイプの早期癌にも行われています。この手法が広く導入されてきて、早期癌の外科手術例がずいぶんと減ってきています。

まずは胃癌を周囲の正常胃粘膜を含めて、切除予定腺を決めます。その後に粘膜下層へ生理食塩水やヒアルロン酸などを注入し、病変を持ち上げます。つぎに、切除予定線に沿って粘膜を切開します。粘膜下層をITナイフやフックなど、専用の器械を使って剥離していきます。切除後は止血処置をし、標本を回収して病理検査をおこないます。

高度な技術を要する処置で、導入当初は胃に穴が開いたり、出血したり、と合併症も多く大変でした。技術や器械の進歩により、安定した手技となりつつありますが、もちろん入院が必要です。経験豊富な病院での処置が望まれます。

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